わたしは最近、梨木香歩の『ほんとうのリーダーのみつけかた』を読んだ。
梨木香歩さんの本を読むのははじめてである。よく知られている本はきっと『西の魔女が死んだ』ではないかと思うのだが、わたしは読んだことがない。
さて、この本のカバーの袖には、こんな文章が書かれている。
「非常時というかけ声のもと、みんなと同じでなくてはいけないという圧力が強くなっています。息苦しさが増すなかで、強そうな人の意見に流されてしまうことって、ありませんか? でも、あなたがいちばん耳を傾けるべき存在は、じつは、もっと身近なところにいるのです。あなたの最強のチームをつくるために、そのひとを探しに出かけよう」
そう、この本は小説ではなくて、生き方というか、哲学?的な本といったらいいんであろうか。生き方指南本? なのである。
生きるということは、人間に限らず、ほとんどの生きものは群れを作ってそのなかで生きているのであるから、そう、生きるということは群れることである、といっても間違ってはいないと思う。そのほうが生きるには有利なはずである。そしてそういう群れで暮せば、みんなと一緒、同じでなくてはいけないという同調圧力が、常にかかってくるということになる。
そのことは、群れで暮らしている以上どうしようもないことではあるし、それはそれでいけないことではない。しかし、大事なことは、何も考えないでまわりにあわせて群れることでは決してない。自分のなかに、自分を見つめる目をしっかりと持った自立した個人として、群れのなかにいることである。
それはどういうことであるかというと、たとえば、「え? そうかな?」と思ったことを大切にするということでもある。それが自分らしさを保つ、自立するということである、と梨木さんはいっていると思う。
そのためには、ものごとにたいして、「え? そうかな?」と思えるような自分を持っていないといけない。まずはそういう自分をつくることである。嫌なことには嫌だと言えるように、やりたくないこと、やってはならないことをやらされそうになったときには,やりたくないと意思表示ができる人間になること。
そこから、いまの日本の多くの人が感じているであろう無力感のなかから、なんとか脱しようとする人々が、力が生まれてくるに違いないと、梨木さんは願っていると、わたしは読んだ。
そしてその思いに大いに賛同するし、そのなかのひとりとして生きていきたいと願っている、わたしも。
70ページの本なので、1時間くらいで読めると思う。おすすめ。
アジの群れ
「群れる鯵リーダーそれぞれの中にいて」