だいたいは日々のなんでもないお話

日々の記録というか、忘備録。本が好きです。

都甲潔『感性の起源』

本日読み終わりました。副題は「ヒトはなぜ苦いものが好きになったか」です(中公新書,2004年11月)。
わたしは日本酒が好きなものですから,日本酒を評価というか,一緒に飲んでいる人同士で感想を言い合ったり人にすすめたりするとき,飲んだ日本酒の味や香りをどのように表現したらよりよく伝わるかと言うことに関心があるので,その興味から読んでみたいと思ったのです。

著者は,「好き・嫌い」とか「おいしい・まずい」といった,個々人にとって,同じものに対しても違う感じを感じると思われる感覚を,何とか科学でとらえようと試みて研究をしている人のようです。「はじめに」で,著者はこういっています。
「私たち人間を単細胞生物と比較しながら,私たちの感性の正体を探っていく。……それは,〈普遍性〉を求める科学と〈個々〉に由来する感性との融合への糸口である。感性の起源をたどることで,なぜ私はこれが好きなのか,あれが嫌いなのか,を分析することができるのである」

「おいしい」と感じたり「いいにおいだ」と感じたりする感覚に普遍性ってあるのでしょうか。
美味しい料理とか,多くの人に人気のある化粧品などは世界に共通して受け入れられているように思います。ということは,普遍性があるということですよね。
しかし反面,私の身近を見回してみると,「納豆は食べられない」とか「生魚は食べない」とか言う人が結構いたりするのです。ある人は大好きな同じものが,ある人は大嫌いというわけです。ということは,おいしさやにおいには普遍性がないということですよね。
いったいどうなんでしょうか。

人間の感覚には,「五感」といわれるように,「視覚,聴覚,触覚,味覚,嗅覚」の5つがあります。この本では,そのうちの3つ「視覚,味覚,嗅覚」について,単細胞生物の行動や,生物の自己組織化と「場」という観点や,「おいしさを感じる脳の働き」の観点などから論じています。
単細胞生物がちゃんと苦いもの(毒である可能性が高い)をさけるということや,味覚センサーで味を科学的に分析する話などはたいへん面白かったです。
が,「自己組織化と場」の話は,興味深かったのですが,わたしにはよく理解できませんでした。

感性の起源―ヒトはなぜ苦いものが好きになったか (中公新書)

感性の起源―ヒトはなぜ苦いものが好きになったか (中公新書)