だいたいは日々のなんでもないお話

日々の記録というか、忘備録。本が好きです。

橋本淳司『世界が水を奪い合う日・日本が水を奪われる日』(PHP、2009年7月)を読んだ。

人間は「水」がないと生きていけないです。それから、「土」(大地)と「緑」も。
この3つは常にいっしょにしか存在できません。
なぜなら、水がないところには緑はもちろんありませんし、土も存在できません、そこにあるのは、岩か砂です。
では、緑がないところはというと、そこは砂漠か岩山です。水も土も存在できません。
そして、土がないところはというと、これまた砂漠か岩です。そこには緑も水もありません。

その「水」が日本から奪われるというのですから、穏やかではないタイトルです。
「いったいどういうことなんだ?」と、読み始めました。
日本は島国ですから、川に流れている水をどこか外国が持っていくというようなことはもちろんありません。が、だからといって絶対無縁だとも言い切れないようです。
最近では、中国を中心とした外国企業に、日本の水源地が買収されるのではないかと懸念もされているようです。

世界各地では、水不足が発生し、少ない水をめぐって、川の上流に位置する国と下流に位置する国とで奪い合いが起きているとのことです。
本書には、水不足から実際に争いが起こっている地域のことや、もともと水が少ない国の水問題などとともに、水道の水の問題にも言及しています。
「水問題ってなんだろう?」と気になるという方はぜひ読むといいですよ。

●目次
はじめに
第1章 世界を旅して水問題を知る
1.旅立ちの前に
目薬一滴分の水をめぐって/世界の要人たちの警告/「水旅行」への出国手続き
2.水のない国、汚れた水しかない国
水泥棒、水殺人が起きたオーストラリア/慢性的な水不足に苦しむ中国北部/ヒ素に汚染された地下水を飲む人たち
3.水紛争地帯を歩く
メコン川をめぐる水争い/中国にとっては国内河川/アラブとユダヤ、二千年の水争い/チグリス・ユーフラテス川の水利権争い/八十年前の条約に縛られるナイル川流域諸国/アラル海周辺での水紛争/ライバルのいない国/国際河川以外での水対立
4.水問題を見る視点
二十一世紀の水問題/「インディペンデント」紙の恐ろしい予測/持続可能性を考え、実行する/紛争を未然に防ぐ政治の枠組みと安全保障

第2章 日本に流れ込む国際河川
1.ボトルに入ったブルーゴールド
日本人の68.6%がボトル水を飲用/水をめぐる企業と地域住民との紛争/水価格の決定権は企業に/環境負荷の高いボトル水/【問題】なぜ日本の水道事業者がボトル水を売るのか?
2.日本に流れ込む国際河川
【問題】天ぷらうどんの材料で自給できるものは?/水の偏在と食の偏在/水不足が穀物生産をストップさせる/中国発食糧危機は食生活の欧米化が原因/世界的エタノール・ブームの陰に/国際河川の最下流にいる日本/食料を大量輸入する残飯大国/【問題】あなたの食べている牛肉はどこから来たか?/【問題】あなたの着ている服はどこから来たか?

第3章 ウォーター・バロンは水問題の救世主か
1.世界の水道はわずか二社の手中に
水ビジネスの巨人たち/「鉄の女」の新自由主義とウォーター・バロン/フランスの二大巨人、スエズヴェオリア/新興勢力、ゼネラル・エレクトリックシーメンス/中国におけるウォーター・バロンの動き
2.水道技術大国の死角
砂漠に水と緑をもたらしたRO膜/シンガポールの淡水確保に貢献した日本の技術/総合商社の水ビジネス/日本の水戦略の死角
3.水ビジネスの暗い陰
クールなビジネスマン/民営化がアルゼンチンを救う唯一の方法/水道料金を払えない住民に対してサービスを停止/水価格の上昇は避けられないのか/ウォーター・バロンの資金源

第4章 汚れた水を飲む人たちを救う技術
1.問題を抱える地方の町
安全な水にアクセスできない人たち/予算は都市部に割かれる
2.生物浄化法(緩速濾過)が町を救う
二〇〇〇人規模の浄水場ができた/水道のない地方の河川水を飲用可能に/コンテナ型パイロットプラントの性能/見えてきた課題/水道の管理・運営は地域住民が行う/前処理工程を充実させ濁度の高い水に対応
3.素掘り井戸の水、表流水をいかに安全な水にするか
発展途上国の水道事情/表流水を使っている人にマッチした技術/現地ですべて調達できる技術/「水の3R」技術を伝える

第5章 水道破綻とブルーニューディール
1.はっきりしてきた料金と味の地域格差
地域によって九倍の料金差の理由/まずくて飲めなかった東京の水道水/高度浄水処理の導入で東京の水がおいしく/地方と東京の差は大きい
2.水道料金値上げの理由
人口減少による収入減/企業の地下水利用による需要減/施設の維持管理費の重み/メーカー主導で借金漬けの水道事業者/広域水道に参加したための費用増
3.水道破綻と民営化
更新費用が国家財政の「爆弾」になる/水道事業の民間委託/経験不足の日本企業/ISOとWTOの罠/黒船来襲のショック
4.水・エネルギー自治とブルーニューディール
自然エネルギーの時代/持続可能な地域の集合体/浄水場の太陽光発電/山間部で小規模水力発電を/下水道事業をバイオマス発電事業に/地方自治体の首長は水とエネルギーを真剣に考えるべき/地下水を清浄に保つ/地域住民の利益を優先させるために

終章 水リテラシーが水危機を回避する
水をめぐる選択に迫られる/世界の水事情を知る「世界水旅行」/世界各地の水事情を語る「水の声」/「世界水旅行」を終えた感想/水をテーマにした授業の深まり/共感と不利益へのコミットメント