だいたいは日々のなんでもないお話

日々の記録というか、忘備録。本が好きです。

山口絵理子さんの『裸でも生きる』という本を読んだ。

 副題に「25歳女性起業家の号泣戦記」とあるとおり,25歳で自分で会社を立ち上げた女性の自叙伝である。(2007年9月,講談社)
 ただそれだけならば,たぶんわたしはこの本を手にすることはなかったと思う。手にしたのは,その起業したという会社がバングラデシュのジュート(麻)を使ってバングラデシュで作ったバッグを売るという会社だったからだ。
著者がなぜバングラデシュに行ったのか,バングラデシュってどんなところなんだろうか? ということに興味を引きつけられたからだ。

 だが,そのわたしの知りたかったことのひとつ,バングラデシュってどんなところなんだろうかとの疑問には,この本はあまり応えてくれてはいなかった。
 でも,本はおもしろかったし,ぐいぐいと読めた。内容は,最初に自叙伝と書いたとおり,著者,山口絵理子さんの小学校からいままでの半生を綴っている。小学1年生の時のいじめから登校拒否になったのを克服して,高校で男しかいない柔道部にむりやり入部して地獄のような特訓に耐え,そのあとも受験勉強を短期間に集中してやって慶応大学に入りと,とにかくむやみやたらとがんばる人なようだ。

 で,大学で「開発学」(というのがあるんですね)というものに出会って,卒業したら国際援助関連の仕事に就きたいと思って,じっさいにそういう仕事もしてみるのだが,自分がその当の援助をしている国のことを何も知らないことがいやになり,世界の最貧国といわれていたバングラデシュに行ってしまったことが,彼女のバングラデシュとの出会いだったのだ。

 それで,「日本で売れるようなものをバングラデシュの人びとに作ってもらう」という仕事をする決意をし,ジュートという繊維を使ったバッグを作ることに決めたのだ。バッグを作ってもらうための工場探しや,一度はうまくいったもののその後裏切りにあったりだまされたりしつつもなんとか生産と販売を軌道に乗せたというわけだ。

 バッグのことを知るために,日本でバッグ職人の養成学校に通ったりするなかで,大事なことに気がつく。それは,

「街中にあふれるバッグたちのなかで,どうして人は,ある一つのバッグに目を留め,そして一生懸命貯めたお金を払って,お買い物をするんだろう。
その一つのバッグのどこがどう好きで,そして,どんなところで「買おう」と決めるのだろう。そんなシンプルなことを,毎日,毎日,考えるようになり,暇があったらデパートやセレクトショップを歩いた。
 そして自分なりに出した結論は,バッグだけじゃなくてどんな商品も「そこにしかないもの」,つまり「オリジナリティ」を持った商品が勝ち残っていけるんだということだった。単純で,シンプルなことだと思う。
……
 私はジュートという特殊な生地を使っている。皮の風合いや高級さに比べたら,常に見劣りしてしまうというハンディをすでに背負っている。
 そこで私は思った。
 「それじゃあ,皮では絶対にできないもの,ジュートだからできるものをつくることが大事なんだ。素材の良さをもっと生かそう」
 このひらめきに出会えたことは,後にとても重要な要素となった。新商品の開発軸になったからだ」

ということだった。じっさい,この開発軸にそった新商品がよく売れて,会社は順調に成長していってるようである。
 副題に「号泣戦記」とあるとおり,よく泣いては弱気になるのだが,そのたびにあきらめないでふんばるのである。体は小さいらしいが,そうとうににエネルギッシュな人なのであろう。

 彼女の作っているのはバッグだから,本とは違う。でも,「オリジナリティ」をもった商品が勝ち残るというのは共通していることではないかと思う。