だいたいは日々のなんでもないお話

日々の記録というか、忘備録。本が好きです。

中川恵一『放射線のひみつ』を読みました

だいぶ前に書いた文章です。

今話題の(?)中川恵一『放射線のひみつ』を読みました

中川恵一『放射線のひみつ』(イラスト:寄藤文平,朝日出版社,2011年6月,本体900円)を,知合いに借りて読みました。結構話題になっていて,この本を貸してくださった方は,著者の中川恵一さんの講演会にも行かれたそうです。

タイトルは「放射線のひみつ」となっていますが,べつに「ひみつ」という感じのものではなくて,副題「正しく理解し,この時代を生き延びるための30の解説」にあるとおり,「放射線とはなにか」「人体にとってどういう影響があるのか」ということの解説本でした。

だいたい,あの福島の原発の事故が起こる以前は,放射能といえば「放射能」であって,「放射線」とか「放射性物質」などという言葉を聞いたり言ったりすることはなかったと思います。そういう「放射線」や「放射性物質」「放射能」という言葉の違いから始まって,これまた事故以来ひんぱんに目や耳にするようになった「シーベルト」や「ベクレル」や「グレイ」,そして,「ミリ」「マイクロ」といった言葉の解説がとてもわかりやすく,寄藤さんの親しみやすいイラストとともに解説されています。

言葉と単位の基本的な知識の解説の次は,第2章。いよいよ本題の放射線の話です。著者の中川さんは,東大病院放射線科准教授/緩和ケア診療部長ですから,放射線については専門家なわけです。ここでも,放射線を花粉に例えて,とてもわかりやすく,放射線とはどういうもので,じつは常に身の回りにあるものであることとか,人間と放射線との関係というか,影響にはどのようなものがあって,どう対処するべきかということなどが述べられています。

そして,第3章では,その放射線のリスクをどう考えればいいのかというお話です。

読後の感想としては,「そうか,今の段階では,原発の近くにいなければ,たとえば東京での放射線量が通常の2倍になったからといって,心配はいらないんだな」というふうに安心してしまいました。もちろん今後の原発の状況によってはそんなことも言ってられないわけですが。

しかし,ちょっと意地悪な見方をしてしまうと,著者の仕事は,放射線を患者に浴びせて病気を治すということですから,いってみれば,放射線の味方なんですよね,著者は。だから,こんなに,「放射線量が基準値以内ならばまったく心配はいらない,野菜嫌いやタバコの煙害のほうがよっぽど癌になるリスクが高いんですよ」といっているのではないのだろうか。とも思えますが,その放射線のリスクについて言えば,ちゃんと過去の,主に広島・長崎の被曝患者の研究成果のデータを元に論じているので,信用できないということはないと思います。

信用していいんでしょうねえ,と言うしかないよねという感じです。

もっとも,著者の真意は,「私を信用するとかそういう問題ではなくて,あなた自身が判断できるようになるためにこの本を書いたんですから,読んだんなら,ここから先どうするかはご自分で判断しなさい」ということなんでしょうね。

はい,自分で考えます!