だいたいは日々のなんでもないお話

日々の記録というか、忘備録。本が好きです。

橋本淳司『67億人の水――「争奪」から「持続可能」へ』
日本経済新聞出版社,2010.5)を読んだ。

 一読後の感想は、「ほー、水ってそんなに地球的規模では大きな問題になっていたのか」というおどろきでした。これは多分わたしだけでなく、日本に暮らしている人なら同じような感想になるのではないかと思います。日本にいる限りは、どこに行っても水がなくて困るという経験をすることはまずないでしょうから。

しかし、日本を一歩出ると事情はだいぶ違うようです。例えば日本の隣の中国です。中国といえば国内に大きな川,黄河揚子江を持っているにもかかわらず,水は不足しているようです。
 中国は人口も多いのですが、経済の発展によって工場が使う水の量がどんどん増えて、水不足と河川の汚染が大きな問題になっているということです。
 それで、著者は中国政府に呼ばれて、自治体の節水担当者や子どもたちを対象に、水の大切さを伝えるためのセミナーやワークショップを行ってきたということです。

 中国だけではありません。シンガポールは水を専らお隣のマレーシアに頼っていたのですが、マレーシアが、その水の代金を大幅に値上げしてきたので、シンガポールは何とかマレーシアに頼らない方策を模索しはじめているとのことです。それは、海水の淡水化や下水の再利用などの方法です。
 シンガポールはお金持ちの国なのでこのような対策が取れますが、水もないお金もないくにでは水不足はなかなか深刻な問題となっているようです。

 さて、水というと飲み水のことがまずは頭に浮かんでくると思いますが、それだけでなく、いろいろな物を洗ったりするのにも使いますし、工場でも大量に使います。それに、農業でもとてもたくさんの水を必要としています。
 ですから、農産物や工業製品を輸入するということは、間接的に大量の水を輸入しているということに他なりません。日本に住んでいるからといって、日本以外の地域の水問題と無関係ではいられないのです。
 「水」のことも、わたしたちは、世界というか地球規模で考え、関心を持っていたいと思いました。

●目次
1.森の章ーー水源の森は大丈夫か
2.中国の章ーー教育で水を守れ
3.都市の章ーー1億6000万トンの雨水を生かせ
4.ダムの章ーー水田や河川でも治水はできる
5.水道の章ーー公営から民間委託へ
6.水ビジネスの章ーー世界の水メジャーVS日本企業
7.国家の章ーーニューウオーターとブルーニューディール
8.エネルギーの章ーーFood,Energy,Waterで考える
9.テクノロジーの章ーー不足・衛生・貧困問題をローテクで解決
10.市民の章ーー自分の水は自分で守る