だいたいは日々のなんでもないお話

日々の記録というか、忘備録。本が好きです。

おあずけの新酒ようやく呑めにけり

東京都のコロナ禍による緊急事態宣言が解除された。そして、禁じられていた飲食店でのお酒の提供が、可能になった。

わたしは以前、「アルコールが消えた」というタイトルで、わたしがお昼を食べるためによく行く食堂でアルコールの提供がなくなった話を書いた。ある人々にとっては、ささやかな楽しみを奪われたのである。

 

kwsk.hatenablog.jp

 

で、緊急事態宣言が解除されたことによって、その食堂でもお酒が無事に飲めるようになったわけである。めでたしめでたしである。

ところで、この食堂はなぜかお昼どきに、ビールや焼酎や日本酒を飲みながらお昼を食べているお客さんが、結構いるのである。しかも緊急事態宣言中に飲めなかったものだから、なんだかいまは以前よりも飲んでいるお客さんが増えているように思うのだ。みなさん、やっぱり結構我慢を強いられていたのである。その反動であろう。

先日、カウンター席に座っていたわたしの隣りに来たお客さんは、初老の男性であったが、座るか座らないかのうちに、水を運んできた店員さんに、「もうアルコールは大丈夫なんだよね? ビール、すぐ持ってきて。なんでもいいから、キリンでいいよ」と、息咳切って注文をしていた。そんなに焦らなくてもいいのではないかと思ったのであるが、この店でお酒が飲めるのを、ずっと待っていたんだろうなあと思うと、なんだか、じーんときてしまったのだ。

おじさん、ほんと、よかったですね、と思いつつ店内を見渡してみると、わたしの後ろの四人席では、これまた定年退職しているであろう男性の四人組がサワーなど呑みながら談笑しているではないか。いいねえ。これが人間の日常、あるべき姿だと思うのであるが、コロナ禍で、それができなくなっているのである。このままコロナが収まってくれないものであろうか、などと、またしみじみとこの一年半の自粛生活をなんとなくぼんやりと思いだしつつ、ゆっくりと箸を動かして昼ごはんを終えたのであった。

 

考えてみるともう2年近くも、わたしたちはマスクをして、大声で笑うこともなく、親しい友人たちとお酒を飲んで騒ぐこともなく、旅行に出かけることもほとんどなく、親戚や、場合によっては親子でさえ気軽に顔を合わせることもなく、過ごしているのである。いつの間にかそんな生活にも少しずつ慣れてきてしまっているような気がしないでもない。ウイズコロナというのであろうか、こんな状態のことを。

しかしやっと、食堂のお客のおじさんたちのように、すこしずつ通常の生活にもどってきはじめたところなのである。このまま徐々に普通の暮らしにもどれるのであろうか。わたしにはわからないが、ぜひとももどりたい。普通の暮らしの幸せを存分に味わいたいと願っているのである。

 

 

 

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「おあずけの新酒ようやく呑めにけり」

「秋の昼緊急事態開けて呑む」

「月満ちて緊急事態開けて呑む」

「空澄みて緊急事態開けて呑む」

「ひさびさのお酒の甘き秋惜しむ」

「秋惜しむお酒一本の声はずみ」