だいたいは日々のなんでもないお話

日々の記録というか、忘備録。本が好きです。

新酒飲み本を開けば夜も更けて

前回、大阪の小さな書店、隆祥館書店の二村さんという書店主の紹介記事について書いた。

 

kwsk.hatenablog.jp

 

その記事には、こんな、小さな書店の抱える問題についての記述もあったのである。

 

「ランク配本という制度があります。本は取次という卸会社から各店舗に配分されるんですが、この時に月商と売り場の面積によって配本される冊数が決まります。うちのような小さな書店は、その時点で不利。

以前、見本を読んだ段階で「売れる」と判断し、発売前からたくさん予約注文を取った本がありました。当店が何度も週間の売上数全国一位を記録したのですが、文庫化された時の配本はまさかのゼロ。

もちろん取次会社の中にも現状を変えようと奮闘してくれる人もいますが、制度自体は何も変わっていません。せめて著者別の販売実績を配本に反映してほしいです。〈この本屋さんはこの作家さんが得意〉というふうに個性が光ってる方がお客さんも楽しいでしょう」

 

 という問題である。書店が、この本はうちで売れる、売りたい! と思っても、新刊が出た時に売りたいと希望する冊数を配本してもらえないのである。これでは、書店もやる気が発揮できないではないか、とわたしも思う。なんとかならないものであろうか。二村さんも「制度自体は何も変わっていません」とおっしゃっているように、ずっと以前から指摘されている問題なのである。それにもかかわらず、いまも変わっていないということなのである。

よく売れる有名作家の新刊は、大きな書店に行くと、入ってすぐのところに、山積みされているということがよくあるが、隆祥館書店くらいの小さな書店には、行っても全然置いてなかったりすることがある。そういう問題なのである。

 

現在、日本にはだいたい1万1000店ほどの書店があるので、新刊本がたとえば1万部作られたとすると、各書店に1冊としても、全部の書店には行き届かないことになる。ましてや大きな書店には100冊とか配本するとなると、小さな書店には行き渡らないことになってしまう。

取次会社にとってみると、毎日毎日次々と刊行されている新刊書籍を、たくさんの書店に配本しなければならないわけであるからして、そんなきめ細かいことはやってられないということだとは思うのであるが、書店を利用する人にとっては、近くの小さい書店にこそ、人気作家の本は売っていてほしいのではないだろうか。そうでなければ、ますます小さな本屋さんは潰れてゆくことにならないか?

総務省統計局によると、2019年の新刊本の点数は、約7万点とのことである。これは、1日にするとだいたい200点になる。取次会社は複数あ

るとはいえ、これだけの本を毎日毎日全国の書店に配本するというのは、大変なことであるだろう。わたしにはちょっと想像の範囲を超えているような気すらするが、しかし、読者と書店と取次会社と出版社の連携をより良いものにしてゆく努力はしたいと思うのである。

 

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「新酒飲み本を開けば夜も更けて」

「新酒買い本屋に寄ってから帰る」

「本に出合う読書の秋本屋にて」

「ぎゅうっとつまる小さな本屋読書の秋」

月照らす小さな本屋見つけたり」

「本屋にて見つけてうれし月を見る」